今回取り上げるのは明治時代で最も世間の好奇心をかきたてた「猟奇事件」。当時一般に広まったのは「美女に恋して結ばれたが、義兄ともどもハンセン病と分かり、特効薬として少年を殺害。肉を切り取り、スープにして義兄に飲ませた」というセンセーショナルな筋書き。さらにその義兄を毒殺。加えて金目的で薬店店主を殺したとされた。 裁判では少年殺しも義兄殺しも無罪に。店主殺害のみの犯罪事実で死刑に処された。しかし、その後も長く、それらは結び付けられて語られ、事件は「臀肉(でんにく=しりの肉)事件」とも「人肉スープ事件」とも呼ばれた。 不思議なのは、演歌師が事件を題材に歌って大流行した演歌が、運命に翻弄された純愛悲恋物語になっていたこと。時は日露戦争の戦勝に国民が沸き立ち、明治の「坂の上の雲」の頂点にあったころ。そんな隆盛の時代の人々に事件はどのように受け止められたのだろうか。 今回も当時の新聞記事は、見出しはそのまま、本文は現代文に書き換え、適宜要約する。文中いまは使われない差別語、不快用語が登場するほか、敬称は省略する。

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