【ニューデリー時事】パキスタンでカーン前首相の逮捕に抗議するデモが激化し、混乱が広がっている。 国民的スポーツであるクリケットの元スター選手だったカーン氏は今も大衆の人気が高い。逮捕で政権批判が爆発する事態は目に見えていた。逮捕強行の背景として、カーン氏と軍の対立が頂点に達した結果とみられている。 ◇裁判所で急襲 「9日は(歴史の)汚点となる一章として記憶されるだろう」。軍統合広報局は声明を出し、9日にカーン氏が汚職容疑で逮捕された後、デモ隊による軍や政府の施設への襲撃が相次いだことを非難した。警察などによると、デモ隊と治安部隊との衝突で少なくとも8人が死亡した。 カーン氏は100件以上の容疑で捜査対象になっていると報じられている。3月にも今回とは別の汚職事件で逮捕状が出たが、身柄拘束は見送られていた。 しかし、今回はカーン氏が首都イスラマバードの裁判所敷地内にいたところを急襲し、汚職などを捜査する機関の指揮によって身柄を拘束された。この敷地内での拘束が問題視され、12日に釈放されたが、なぜ逮捕はこのタイミングだったのか。 ◇「潮目変わった」 カーン氏は、反政府デモを率いていた昨年11月、銃撃を受け負傷した。それ以降、軍幹部が自身の暗殺を企てたと繰り返し主張、逮捕直前も軍を強く批判していた。 これに対し軍広報局は8日の声明で「証拠もなく、無責任で根拠のない疑惑を提起している」と反発。「法的措置を取る準備をしている」と警告した。 ラホール経営科学大のムハンマド・ワシーム教授(政治学)は地元紙ドーンに対し、軍はこれまでカーン氏の批判にも平静を保つよう努めてきたが「潮目が変わったようだ」と述べた。地元のベテラン記者は「軍広報局の(8日の)声明から12時間以内に逮捕されたのは、単なる偶然ではない」と語り、軍の意向が働いた可能性を示唆した。 パキスタンで軍が持つ力は強大だ。時の政府は軍を後ろ盾とし、軍政下にあった期間も長い。カーン氏も軍の後押しを受け首相に就いたとみられていた。しかし、不信任決議可決により昨年4月に下野して以降は、シャリフ現政権と共に軍を激しく批判するようになり、関係は冷え切ったと考えられている。

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