アメリカ・ニューヨーク市の地下鉄車内で、叫び声を上げていた黒人男性の首を絞めて死亡させたとして、元米海兵隊員の男が12日、過失致死罪で起訴された。 白人のダニエル・ペニー被告(24)は5月1日、地下鉄車内で大声を出し続けていた黒人のジョーダン・ニーリー氏を、床に押さえつけ、背後から首を絞め上げる「チョークホールド」を行った。 ニーリー氏はホームレスで、目撃者の話によると、地下鉄の乗客に向かって怒鳴り、金銭を要求していたという。 車内で意識を失ったニーリー氏は、搬送先の病院で死亡が確認された。ニューヨーク市の検視官は、死因は首の圧迫だと判断した。 ニーリー氏が死亡した当日、ペニー被告は警察の取り調べを受けたが釈放されていた。 しかしその後、車内での口論の様子をとらえた映像がオンラインに浮上し、人種差別に反対する抗議行動が発生。マンハッタン地区検事局が捜査を開始することとなった。 ペニー被告は12日、後ろ手に手錠をかけられて、マンハッタンの刑事裁判所に出廷し、起訴された。その後、保釈保証金10万ドル(約1360万円)を支払い保釈された。 弁護人は、ニーリー氏を制圧するためにとった行動がニーリー氏の死につながるとは、ペニー被告は知り得なかったと述べた。 有罪となれば、最長禁錮15年の量刑を言い渡される可能性がある。 ペニー被告は7月17日に再出廷しなくてはならない。裁判所は、出廷しなければ逮捕状が発行されるとしている。同被告はまた、パスポートを提出し、州境をまたぐ移動について許可を得る必要がある。 ■何があったのか 列車内の当時の様子を捉えた動画は、フリーランスのジャーナリストが撮影したもの。そこには、ペニー被告がニーリー氏の首を2分55秒にわたって押さえている様子が映っている。 動画を撮影したフアン・アルベルト・ヴァスケス氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、ニーリー氏は乗客に怒鳴っていたが、誰かに暴力をふるっていたわけではないと話した。 ニーリー氏は押さえつけられる前に、「刑務所に入って終身刑になっても構わない」と言っていたという。 ペニー被告の弁護人トーマス・ケニフ氏は、被告は「乗客のために自分の命と安全を危険にさらした」ので、「あらゆる不正行為について、完全に無罪だと認められる」という自信を示した。 ケニフ弁護士はさらに、ペニー被告は「誇らしく頭を掲げ」、自発的に自主したのだと述べた。被告は「(海兵隊員としての)奉仕にこの国は感謝しているし、その経歴にふさわしく誠実に尊厳をもって行動した」とも弁護士は述べた。 ニューヨーク州法に基づき、ペニー被告が不当な死のリスクを生じさせる無謀な行為に及んだのかどうかを、陪審員が判断することとなる。 マンハッタン地区検察のアルヴィン・ブラッグ検事は声明で、「これまでの捜査では多くの目撃者に聞き取りを行い、画像や動画を慎重に確認した。検死官事務所との話し合いも行われた」と説明した。 「裁判が進むにつれ、公正で公平な手続きを維持するため、我々の法廷外での発言は制限される」と、検事は述べた。 ニューヨークで刑事事件の弁護を専門とするジェフリー・リヒトマン弁護士は、BBCの取材に対し、検察が被告の殺意や未必の故意を立証するのは難しいだろうと話した。 「審理が適切に進めば、確実に無罪放免になる」と、リヒトマン氏は述べ、ペニー被告は情状酌量を得やすい被告人だと話した。 ニーリー氏に死亡から数日後の声明で、被告側の弁護士は、被告には「ニーリー氏を傷つける意図はなく、同氏が急死することを予見できなかった」としていた。 弁護士によると、ペニー被告は海兵隊で4年間過ごした。軍曹まで昇進した後、2021年6月に名誉除隊した。現在は大学で建築を学んでいるという。 ■母親の死後、精神的な問題あったと 遺族は今週初め、ペニー被告は刑務所に入る必要があると、声明で述べていた。「ジョーダンは大事な人だったと知ってほしい。遺族はそう願っている」。 ニーリー氏は、ニューヨークの観光スポットタイムズ・スクエアでマイケル・ジャクソンの物まねをする人として知られていた。「歌って踊って、大勢を楽しませた」と、遺族側の弁護士ドンテ・ミルズ氏は述べた。 地元紙ジャージー・ジャーナルによると、ニーリー氏の母親クリスティ・ニーリー氏は、2007年にボーイフレンドに殺害された。男は2012年に禁錮30年の刑を言い渡されたという。 母親の死後、ニーリー氏は精神的な問題を抱えるようになったと、ミルズ弁護士は述べた。 米メディアによると、ニーリー氏には不正乗車や窃盗、3人の女性への暴行など、42回の逮捕歴がある。 ミルズ弁護士は12日、ペニー被告は「事件を起こす前、ニーリー氏のことは知らず」、逮捕歴のことも知らなかったと述べた。「なので、それ(逮捕歴)は今回の事件と無関係だ」と話した。 ニューヨークのエリック・アダムス市長は、ニーリー氏のような人をより効果的に保護するため、精神医療制度を改善する必要性があることを、今回の事件は浮き彫りにしたと述べた。 アダムス市長とキャシー・ホークル・ニューヨーク州知事は、ニューヨーク地下鉄の安全性向上のため、警官による警備体制を強化した。 (英語記事 Ex-Marine charged with NY subway chokehold death)

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