2023年5月8日、東京都中央区銀座の高級腕時計店で強盗事件が起きました。通行人が多い昼間の時間帯だったため、犯行の様子が歩行者に動画で撮影され、逃走に使った車両のナンバーも映っていました。SNSでは「映画かと思った」などのコメントとともに、動画が拡散しています。テレビのニュースで動画を見た人も多いのではないでしょうか。 この記事を書いている時点では、関与したと見られる容疑者達は別の建物への侵入容疑で逮捕されています。逮捕となった4人は、互いに面識のない16歳~19歳の高校生やアルバイトとわかりました。犯行の様子もプロの仕業とは言い難いため、警察庁は「闇バイト」で集められた可能性も含めて捜査しています。 闇バイトとは、近年おもにSNSやネット掲示板で募集されます。「日当15万円以上」「即日現金」など、短時間で高収入が得られることをアピールする点が特徴的です。バイト募集の段階では仕事の内容を明かさず、実態は特殊詐欺の「受け子」や「出し子」、強盗の実行犯を任され、犯罪の「捨て駒」として使われてしまいます。 最近では、大手求人サイトや求人情報誌でも「受け取り・配送」や「現場系作業スタッフ」を語り、闇バイトを募集しているケースが増えています。こちらは高額報酬よりも、働きやすさを前面に出していることが多いようです。犯罪の意識もないまま荷物の受け取りを行って逮捕された事例も起きており、警察庁と厚労省、そして求人サイト運営社が対策を強化しています。 なぜ闇バイトに応募してしまうのか うまい話には裏がある――。簡単に高額収入を得られるはずがないと大人はわかっていますが、未熟な年代は報酬に目がくらんでしまうのかもしれません。 背景のひとつとして、アルバイト採用の競争率が上がっていることもありそうです。現在の大人世代が学生のころは、アルバイトに応募すればほぼ確実に採用されていたと思いますが(もちろん職種にもよります)、最近は面接で落ちることが増えていると聞きます。収入を得たい若者は、ネットで良さそうな仕事を見つけたら、とりあえず応募してみることがあるのでしょう。また、「先輩から誘われた」など、知り合いから声をかけられるケースも多く、人間関係から断りにくいため応募してしまうこともあるそうです。 とはいえ、闇バイトと知らずに応募したとしても、特殊詐欺の受け子や強盗ともなれば、仕事内容の説明を聞く段階で犯罪なのでは……? と気づくはずです。それでもなぜ途中でやめずに犯罪を実行してしまうのでしょうか。 大きな理由は、闇バイトに申し込んだ時点で自分の個人情報を渡しているからです。自分の名前や住所だけでなく、身分証明書のコピー、実家の住所、両親の名前や職業まで詳細に伝えるケースが多いのです。仕事を拒否すると「家族を殺す」のような脅しを受けるため、指示役への恐怖が先に立ち、犯行に手を染めてしまいます。 今回の銀座の強盗事件でも、指示役が面識のない4人を動かして犯行をさせたと見られています。指示には「Telegram」などの痕跡が残りにくいメッセージアプリが使われることが多く、自分の情報は相手に知られているのに、自分は相手の情報を何も知らないままで犯行に。指示役の上にも指示をする人がいる場合もあるでしょう。もっとも儲けているトップの人間が誰なのか、実際に手を動かした人は知るすべがないのです。 うまい儲け話はない 闇バイトに一度でも加担すると、その後の人生は一変します。特殊詐欺では10年以下、強盗は5年以上(最大20年)の懲役に服することになります。就職や結婚のマイナス要因、運転免許証やパスポートの取得・更新に制限が生じる場合も。少年法で守られると指示薬から説得されるかもしれませんが、18歳と19歳は「特定少年」として実名報道される可能性もあります。 警視庁は2023年3月から「#BAN 闇バイト」という取り組みによって、闇バイトと思われるSNS投稿に対して警告を行っています。それでも、闇バイト募集の投稿をすべてはとめられません。高額収入をうたう仕事だけでなく、「荷物を運ぶだけの簡単な仕事」といった誘い文句の仕事にも注意が必要です。 もし気づかず応募してしまったら、最寄りの警察署、警視庁総合相談センター、またはヤング・テレホン・コーナーに相談するようにしましょう。 保護者が闇バイトから子どもを守るためには、「うまい儲け話はない」と改めて話すことが大切です。アルバイトに応募するときには、仕事先が真っ当な企業であるかどうかを一緒に確かめましょう。求人サイトでは、架空の住所を名乗っていることもあるといいます。子どもの様子に変化がないかを普段から見守り、スマホを隠すようになったといった不審な行動があったら声をかけてみるのもいいと思います。万が一のときは、一緒に警察署に出向くなど力になってあげてください。 著者 : 鈴木朋子 すずきともこ ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー。スマホやSNSなど、身近なITサービス全般に関する記事を執筆。なかでもSNSに関しては、コンシューマーからビジネスまで広く取材を行い、最新トレンドを知るジャーナリストとして定評がある。また、安全なIT活用をサポートするスマホ安全アドバイザーとして記事執筆や講演も行う。著書は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)、『インターネットサバイバル 全3巻』(日本図書センター)など。

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